「フン!あやつら…浮かれおって」

38度線を、見下ろす山の頂上。

小高い山々。

そこは、もう魔界。

魔の領域である。

国境近くを流れる川は、三途の川なのか。


「どう致しましょうか?」

まだ草木が、茂る山の頂上から、戦火を見ていた魔神のそばに、控える蝙蝠の翼を持った老魔物。

どうやら、参謀のようだ。

「捨て置け!我が姫君の技を、使う者がいたから…あやつらは、手を出したのだろうよ」

魔神は、クククと笑った。

「しかし…バイラ様。人間どもの結界を壊すなら、今が好機かと」

控える参謀を、バイラは無言で見た。

睨んではいないが、その冷たい視線に、参謀の体は凍りつく。

「で、出過ぎたことを…申し訳ございません」

参謀は地に額を押し付けて、土下座する。




「うう…」

何かが、呻いた。

それは、バイラの腕の中に抱かれたもの…。

バイラは、その抱いているものを見つめた。

それはやさしく、労りの目。

「人など捨てておけ!我ら天空の騎士団の目的は、ただ一つ!」

バイラは、38度線の向こう…結界の向こう…

さらなる海の向こうの島国を睨んだ。