その名を聞いた瞬間、荷馬車を囲んでいた狼男達は、一目散に四方八方に、逃げていく。

「ど、どうして…ブロンドの悪魔が、こんなところに…」

怯えすぎて、動けなくなったヤスベエに、鼻を鳴らすと、アルテミアは老夫婦の方に、振り返った。

「もう大丈夫だ」

満面の笑顔で、老夫婦に話し掛けたのに、


老夫婦は目をつぶり、拝んでいた。

「すまぬ…マーク…。無力なわしらを許せ…」

「こんなところに、連れてくるんじゃなかった」


アルテミアは首を捻った。

様子がおかしい。

「おじいちゃん達を、許しておくれ…」

「マーク!」

老夫婦は、孫のマークを抱き締め、泣き崩れる。


どう見ても、助かった喜びではない。

「おじちゃん、おばあちゃん…大丈夫だよ!」

マークは、老夫婦に笑い掛け、

「きっと、助けに来てくれるよ!」

マークは、老夫婦から視線をアルテミアに向け…睨みつけると、指差した。

「きっと助けに来てくれる!勇者、赤星が!お前なんか、恐くないもん!」


「勇者、赤星?」

アルテミアは、眉をひそめた。