サラが周りの魔物をギロッと睨むと、ゴブリン達は怯え、サラの周囲から離れていく。

「撤退する」

サラは、炭と化した隊員達にきびすを返すと、歩き出す。

その後を、雄叫びを上げながら、魔物の群がついて行く。






「馬鹿な…」

槍を突き出した轟は、信じられなかった。

すべての魔力を集中した切っ先が……魔神の人差し指、一本で止められていたのだ。

「馬鹿な…有り得ない…」

絶句してしまう轟に、魔神はフッと笑った。

「なかなか…良かったぞ!人間!」

魔神の指先に触れた切っ先から…槍は砂のように、、れ落ちた。

「くそ!」

轟は、腰に隠していた短刀を抜き、円を描くように、攻撃しょうとした。

「無駄だ」

一瞬にして、轟の後ろに回ると、周囲に風が起こった。

魔神の神速の動きが風を伴い、

その風がカマイタチのように、轟の全身を切り裂いた。

特に、目の辺りが深い。

血を吹き出しながらも、短刀は手から落ちたが、轟は倒れることはない。

痛みの中、ただ心だけが、倒れることを拒んでいた。

「人よ!天晴れなり」