その違和感は、魔力の種類より……首筋についた傷。

そこから、漏れる微かな違う種類の魔力。

「魔王の跡を継ぎ、人を支配するのは……この西園寺俊弘だ!」


西園寺の姿が変わった。

口が突き出し、耳が飛び出ると、全身が黒い体毛に覆われた。


「その姿は!?」

僕は目を見張った。


「な、何!?」

西園寺が、声を上げた。一番驚いていたのは、西園寺自身だった。

「な、何だ!この体は!」

絶叫する西園寺の姿を見て、僕の後ろにいたギラが、笑った。

「フッ…やはりな」

その言葉に、サラが反応した。

「知っていたのか?」

「ああ」

ギラは頷き、

「最初戦った時からな。首筋についた傷……あれは、アルテミア様がつけたもの…。恐らく、アルテミアに吸われることにより、バンパイアの洗礼の力で、今まで抑えられていたのだろう」

「へぇ〜。魔王の器じゃなかったんだ」

リンネは、嬉しそうに感心した。

「王なら……とっくに気付いておられるはず」

ギラは、西園寺の肩ごしに、玉座に座り、微動だにせぬライを見つめた。



「そんな!そんな!お、俺は……」

西園寺は、体毛で覆われた両手を見つめ、

「バンパイアではないのか!王にはなれないのかあ!!!」

そして、喉を掻き毟り、

「アルテミアと同じではないのかあああああ!」

遠吠えのような泣き声を、上げた。

「西園寺……」

僕は、そんな西園寺をただ見ていた。何もすることができない。

とうしたらいいのか…わからない僕の視線に気付き、西園寺は、僕を睨んだ。

「俺を憐れむな!俺を蔑むな!」

狼男と化した西園寺が、襲いかかってきた。

両手の鋭い爪を、僕に突き立てようとするが、シャイニングソードで受けとめた。

「俺を馬鹿にするな!」