魔界の入口での戦いは、熾烈をきわめていた。

しかし、歴戦の勇者が参加している為、人間が魔物を押していた。

「防衛軍の野郎!俺達を囮に使いやがって!」

剣やミサイル、攻撃系の魔法が、カードを介して、発動されていた。

「もうすぐだ!」

空中で、翼竜の首筋に、剣を突き立てたダラスは、フライングアーマーを装着し、天をかけていた。

「うん?」

何か違和感を背中に感じ、ダラスは地上に着地した。

「隊長!はしゃぎ過ぎですよ!あまり無理しないで下さいよ」

ダラスに、駆け寄ってきた若い剣士に、ダラスは毒づきながら、フライングアーマーをチェックした。

「俺を年寄り扱いするな…」

もう初老を越えたダラスは、カードシステムができる前から、戦い続けて来た戦士だった。

「気のせいか……」

もう一度、空に飛び立とうとしたダラスの背中から、唐突に、フライングアーマーが消えた。

「な!?」

絶句するダラスの周りにいる戦士からも、驚きの声が上がった。

「魔法が使えない!」
「どうなっているんだ!」

空を飛んでいた戦士達は、いきなりフライングアーマーが消えて、

地上に落ちてくる。

その時、風が吹いた。

風は、優しく戦士を包むと、地上に降ろした。

「何が起こった!」

魔法を使えなくなった者は、腰からナイフを抜き、ゴブリンから、後退する。

パニックになる戦士達。しかし、なぜか暖かい空気を感じていた。

ダラスは、剣を握り締め、ゴブリンの群れと対峙しながら、なぜか懐かしい空気を感じていた。

(これは…この感じは……)


戦士達のすべてのカードは、使用できなくなっていた。

ダラスは、剣を振るいながら、なぜかいつもより、軽いように感じた。

ゴブリンの胸元を切り付けながら、風が剣を押してくれているように思えた。

(クスクス…)