「これは…朧蛍!?」

ドーム状に張った結界の中で、ロバート・ハイツは驚きの声を上げた。

手を前に出し、結界を張り続ける彼の目の前には、涎を垂らしたゴブリンが、結界を叩き続けていた。

「まさか…サーシャのやつ…」

最悪の事態を想像し、思わず顔を背けたロバートの前の結界が、ゴブリンの拳によって、ひびが入る。

「ロバート!何をやっている!集中しろ」

隣にいた結界士が叫ぶ。

ロバートははっとして、結界を張り直す。

ひびが消えた。

「ロバート!疲れたのなら、交代しろ」

「大丈夫です!」

ロバートに、心配している余裕はない。

この結界を壊される訳には、いかなかった。

(サーシャ)

ロバートは、心配を振り切るように、結界に力を込めた。

その時、

ゴブリンの群の遥か向こうに、眩い光の爆発が2つ上がった。

一瞬、

ロバート達が張る結界の表面に反射し、美しく輝いた。

しかし、光はすぐに消え…再びもとの暗黒の戦場に、戻った。