天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}

「ラ、ライ様に…勝てるというのか!」

老婆は、興奮状態になる。

「今の僕は……負ける気がしない」

漲る力は、とめどもない。


「無理よ」

老婆達の後ろから、声がした。

「な?」

振り返った人々の体が、凍った。

老婆は、人々を守る為、結界を張ったが…結界が凍っていく。

「あなたは、何もできないわ。なぜなら、ここで死ぬからよ」


「誰だ?」

僕の手のひらが燃え、腕を振ると、炎のカーテンができ……凍った人々をもとに戻す。

「皆さん!離れて!」

動けるようになった人々が、慌てて、その場から離れた。

「赤星?」

ティフィンが、僕の後ろに回った。

人々の壁がなくなり、近づいてくる女の姿を、確認できた。

女の歩いてきた道は、凍っていく。その周囲も。

まるで、冷気が歩いているようだ。

僕は、近づいてくる女に、身を覚えがあった。

「馬鹿な…」

目を丸くし、僕は絶句した。

「どうして……この世界にいる!…そ、それに…」

僕が驚いたのは、その姿だった。

人間ではない。

「赤星浩一!お前は、私の大切な人を殺した!だから…」

女の冷気が上がる。露になった乳房につく…ブラックカードが脈打つ。

すべてのものが、凍り付く絶対零度に近い冷気が、赤星を襲った。

「確か…守口舞子さんでしたね」

赤星は息を吐いた。

それだけで、冷気はかき消された。

「一つだけ…質問します。あなたの大切な人の名は!」

赤星が近づくだけで、舞子の冷気は消えていく。

「あたしの…大切な人は…」

予想外のことに、驚く舞子の目に、いつのまにかシャイニングソードを持つ赤星が、迫ってくる。

「誰だ?」

赤星の目が赤く光り、舞子を見据える。

舞子の全身が震え…無意識に唇が動く。

「ク、クラーク…」

舞子の言葉を聞いた刹那、シャイニングソードは舞子を斬った。

「そうか…」

「赤星!」

冷たい口調で、さらに女に斬り付けた赤星に、ティフィンが思わず、声を上げた。