天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}

作戦指令室を出た西園寺は、なぜか気分が優れなかった。

(醜い…)

率直な感想は、それだった。


西園寺は、冷たい空気が漂う廊下を、少し早足で歩いていく。

廊下の突き当たりにある自分の部屋に入ると、西園寺はすぐに妖しい気配に、気付いた。

素早い動きで、ブラックカードを取出し、攻撃しょうとしたが、笑い声がそれを制した。

「クスッ。待ってよ。今日は、戦いに来た訳じゃないの」

あまりにも、能天気な声に、西園寺は、警戒は解かなかったが、すぐに攻撃するのは、止めた。

「お前は…」

声がした方に、西園寺は体を向けた。

ベットに座って、リンネがいた。

「お前は…」

西園寺は、すぐに思い出した。

「魔神!」

西園寺の手に、銃が一瞬にして、召喚された。

「撃ってもいいけど…その程度じゃ~あたしを殺せないわよ」

リンネは、笑顔を西園寺に向けた。

「だろうな」

西園寺も素直に、それを認め、銃を下ろした。

「聞き分けのよい男は、好きよ」

「フン」

西園寺は改めて、リンネを見た。白いワンピースに、腰まであるストレートの髪。戦っていた時は、全身に青白い炎を纏っていたが…今は、消えている。

(炎が消えていると…ただの女だな)

リンネは、西園寺をじっと見上げている。

「どうやって入った?ここは、まがいなりにも防衛軍の本部だぞ」

西園寺の言葉に、リンネはまたクスッと笑った。

「あたしは、騎士団長よ。こんなところに、潜り込むなんて、簡単なことよ」

リンネは、ずっと笑顔だ。

それが、胡散臭い。

西園寺は、無駄な駆け引きを嫌った。

リンネを見据え、

「用件はなんだ?」

率直にきいた。

リンネは笑顔をとき、真剣な表情で、西園寺を見、

「魔王からの伝言を、あなたに伝えに来たの」