天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}

「何だ?今のは………人間の新しい兵器か?」

アルテミアは、墜落していくディグを、あまり気に留めることなく、

目の前にそびえ立つきのこ雲を、睨んだ。


「核か…」

アルテミアは、黒い翼を広げながら、空中で止まった。

このまま、ほっておくと、核の灰や放射能が、風に乗って広がる。

「早くしないと」

アルテミアは、両手を広げた。

目をつぶり、風の流れを感じ、空中にある空気を確かめる。

アルテミアは、天空の女神だ。

「風よ!空気よ!すべてを見守る大空よ!」

アルテミアは、目を開けた。赤き瞳の輝きが、空気の流れを止める。

まるで、時が止まったかのように、きのこ雲さえ固体のように、動かなくなった。

「この空を汚すものを、排除せよ」

アルテミアは、六枚の翼を天に向けた。

きのこ雲…いやその周りの空気…空の雲を包むように、数百キロに渡る風の筒ができる。

筒は地上から、雲を突き抜け、大気圏さえ突き抜け、宇宙への道ができる。

汚れた大気や、大地の土が、筒の中を天に向けて、上昇していく。



数分後、アルテミアは翼をたたみ、ディグが核を爆発させた場所に、着地した。

放射能で汚れた土も、持っていった為、数キロは抉れている。

大地の汚れは、取れたが、そこにあった草木は、残っていない。

放射能や熱は、除去できたが、天空の女神の力を持っていても、自然を戻すことはできない。

アルテミアは、荒れ果てた大地に、1人達…呟いた。

「これでもか…」

アルテミアは腰を下ろし、土を掴んだ。

そして、立ち上がり…手の平に残った土を見つめ、

「これでも…人は守らなければならないのか…ロバート」


アルテミアの体を、風が吹き抜けた。

核により、すべてが吹き飛ばされた為、周囲に風を遮るものはなかった。

アルテミアの手の平にあった土も…すぐに風に飛ばされた。