天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}

「心配しなくてもいいです」

マリアは、ゆっくりと振り向き、

「まだあの子では、女神を倒せませんから」

「!?」 

振り返った西園寺の目に、満面の笑みを向けるマリアがいた。





「ディグ!30秒後に、アルテミアと接触します」

オペレーターの少し興奮気味な声が、作戦指令室に響き渡った。





飛来してくる物体に、アルテミアは目視できるまで、まったく気付かなかった。

ステルス機能。全身が、結界でできているディグに、気や気配など発することはない。

「何だ?」

目の前に現れた黒い物体を、訝しげに見たアルテミアに向かって、真っ直ぐそれは近付いて来る。



「ディグ!モード・チェンジします!」

作戦指令室内で、オペレーターが叫んだ。

「アーマード・モード!」

オペレーターの言葉に、マリアは舌打ちした。

「甘いわ!さっきみたいに、核を…乱れ打ちくらいしたらいいのに」

親指を噛み、苛つくマリアを、西園寺は冷静に見ていた。




ディグの黒いボディに、隙間なく、ミサイルポットが召喚され、両手にはガトリング銃。

それが、一斉にアルテミアに放たれる。


ミサイルと銃弾の雨が、アルテミアのいた空間を、通り過ぎる。

「目標を、ロスト?」

瞳に浮かぶ文字を確認した時、

初めて、ジェシカの体に衝撃が走った。



アルテミアの拳が、ディグのボディにたたき込まれていた。

ディグのボディに、ヒビが入り…そして、翼が切り取られると、

そのまま地上へ落下していく。

「ディグシステム…沈黙」

オペレーターの悲痛な声に、マリアは冷静にこたえた。

「ジェシカ!聞こえる!回復魔法を発動して、これくらいなら、すぐに修復できるはずよ」


「はい!」

ジェシカは痛みを我慢して、こたえながら、腕が動くか確認した。

動く。

どうやら、暴走状態は治まったらしい。

「モード・チェンジ!」

マリアの命令に、

「モード・チェンジ!」

ジェシカはこたえた。