赤星が、骸骨達と戦っている同じ頃。

防衛軍アフリカ戦線が、壊滅的打撃を受けていた。

炎の騎士団に襲撃されたのだ。

灼熱の砂漠が、さらに燃え上がり…カードを持った戦士達が、倒れていた。


そして、半壊したアフリカ本部の建物のそこらじゅうで、襲撃した魔物達も、肉片となり、転がっていた。

そんな硝煙と血の臭いと、灼熱の太陽に照らされながらも、涼しげな様子で、瓦礫の上で立ちすくむ女。

物憂げな瞳で、眼下を見下ろしながら、睫毛を落とした。



「これは、君がやったのかい?」

何の気配も感じさせず、近くまで接近した声に、驚き、振り返った。

しかし、本当の驚きは、振り返ったところにあった。

女は動けなくなった。

そこにいる人物を、女は知っていた。

しかし、印象が違う。

精悍な顔に、頬が削げ…髭は伸ばし放題。

かつて、女が会った男は、凛々しく、清潔感で溢れていた。今とは、真逆だ。

ただ…まだ面影は残っていた。

右手に装着されたドラゴンキラー。それは、彼のものではなかったが…彼の恋人が使っていた武器。

「ロバートか…」

目を細め、呟いた女に、男は笑いかけた。

「久しぶりだな。アルテミア」

その笑顔に、悪意はない。

しかし、殺意はあった。

「これは、君がやったのか?」

ロバートの質問に、アルテミアはこたえない。ただ…瓦礫の上から、ロバートを見下ろだけだ。

ロバートは見上げ、アルテミアの目を見つめた。

ほんの数秒、無言が続いた後、ロバートは何も言わず、ドラゴンキラーを一振りした。

「もし…そうだとしたら」

ロバートはジャンプし、一気にアルテミアの目の前まで来た。

目を見張るアルテミアに、ロバートは、ドラゴンキラーを突き出した。

「この場で、君を殺さなければならない」


アルテミアは鼻を鳴らした。

「できるのか?」

「ああ…できるさ」

ロバートは、ブラックカードをアルテミアに示した。