天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}

こんな雑魚という油断が、あった。

だけど、今の僕は…ただの人間なのだ。

猿鷹の鋭い爪が、次々に地面に突き刺さる。

避けるだけで、僕は何もできない。

「このままじゃ…やられる」

敵の攻撃は、予測できた。

数十匹の猿鷹の攻撃を、擦り傷だけで、紙一重でかわしていた。

自分でも驚いたが、どうやら今までの経験が、僕に戦いの経験値を上げていた。

「ちょこまかと!」

苛立つ猿鷹達の隙が、見える。

だけど、攻撃するすべがない。

「赤星!」

心配して、ティフィンが僕に向かって飛んでくる。

「ティフィン!危ない!下がってろ!」

「キキキキ!!」

猿鷹の一匹が、ティフィンに向かって降下してくる。

「ティフィン!」

攻撃を避けながら、手を伸ばそうとするが、間に合わない。



(昨日誓ったそばから……僕はまた…仲間を守れないのか!僕は!)



「うわあああ!」

絶叫し、避けるのを止めた僕は、落下してくる猿鷹にぶつかりながら、走ろうとする。

しかし、それを見た猿鷹達は一斉に、爪を突き立て、僕に向かってくる。

そんなことは、どうでもいい。

「ティフィン!」

ティフィンに、猿鷹の爪が突き刺さる刹那、

猿鷹の体が真っ二つに切断された。

そして、手を伸ばした僕の腕に、ずしりとした重みのあるものが飛び込んできた。

それだけで、僕にはわかった。

一回転して、風を起こす。

疾風が、僕を囲む猿鷹達に吹き抜けた。

「キキキキ………グギャ!」

風が雷鳴を轟かす。


「そうだ!僕は戦える!人は、武器を持てる!」

引き裂いた猿鷹達は、切口から雷鳴を轟かせ、消滅していく。

僕は、ライトニングソードを天に向けて、突き上げた。

人は、自らの弱さを補う為に、武器を考案し続けた。

「赤星!」

勝利の余韻を浸っている僕に、ティフィンが叫んだ。