天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}

朝焼けに、照らされた翼竜達の群れ。

マグマの湖の向こうに広がる大地には、無数の魔物が蠢いていた。

(ああ…そうか…ここは、異世界なんだ…)

感慨深く、僕は目に見える光景に、胸を締め付けられた。

(それなのに…)

魔力を封印され…カードも使えない。

今の僕は、無力だ。

洞穴は、草原の高台の岩場に隠れるようにあった。

僕は岩場を抜け、昨日の戦いの後を見に行こうとした。

その時、奇妙な笑い声が空から振ってきた。

「キキキキ…」

猿の鳴き声に似ているが、違う。人の声に近い。意思を感じる。

見上げた僕は、息を飲んだ。

数十羽の巨大な鳥がいた。

いや、鳥というより、猿に鷹の体をくっ付けたような魔物。

砂漠の地であった…人面鳥の亜流だろう。

「餌だ!餌!」

猿鷹の意思が、僕の頭に流れ込んできた。

そして、一瞬のうちに、落下してきた。



「チッ」

舌打ちすると、僕はファイアクロウを出し、落下する猿鷹を切り裂いた…………………

はずだった。

鮮血が飛び散った。

「キキキキ…浅かったか」

僕の腕が切れていた。

「なっ」

絶句した僕は、自分の手を見た。

ファイアクロウは、装備されていない。

拳から、肘にかけて、傷が走っていた。

「キキキキ…」

次々に、猿鷹は落ちてくる。

「赤星!」

洞穴から飛び出してきたティフィンの声に、我に返った僕は、地面を転がるように、猿鷹の攻撃を避けた。

ティフィンの声がなかったら、僕はやられていた。

(そうだ…)

この世界では、一瞬の気の緩みで、命を落とすことになる。