天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}

「お前の魔力は、我が封印した。もう鎧を保つことも、できまいて」

男の言葉に、何とか起き上がろうとするけど、まったく動かすことができない。

「さてと…頂くとするか」

笑う男の口元から見える牙に、赤き瞳。

「バンパイアか…」

僕は、何とか顔だけを動かし、男を睨んだ。

「我の力となるがよい」

男が、僕に手を伸ばそうとした瞬間、

男の背中が爆発した。

爆発は、何度も何度も起こったが、男は手を止めただけで、びくともしない。

「フレア…」

火の玉をぶつけているのは、フレアだった。

「やれやれ」

男はため息をつくと、振り返りざま、腕を曲げた。

そこに、フレアの蹴りが決まる。

しかし、男に変化はない。

「はああ!」

気合いを入れて、男の顔面や心臓に、正拳をたたき込む。


「兄貴!しっかりするメロ!今は、逃げるメロ」

倒れている僕に駆け寄り、抱き上げると、肩を入れ、僕を運ぼうとする。

「あいつは…一体…」

非力なメロメロは、僕を引きずるので、精一杯だ。

「あれは多分…魔王レイメロ」

踏ん張りながら、僕を連れていこうとするが、そんなに進まない。

「あれが魔王レイ!」

「どうして、城が出てるのか、わからないけど…」

「だったら、話は早い!僕は…魔王に会う為に」
「駄目メロ!」

振り返ろうとする僕に、メロメロは叫んだ。

「魔王は、兄貴を殺すつもりメロ!やっぱり魔王になんて、会ってはいけなかったメロ」

「しかし」

「姉さんが、時間稼ぎしてくれているメロ!その間に!」

メロメロは、必死に前へ進む。

「分かったメロ!兄貴は、魔王より強いメロ!こんなケガなんて、治ったら、余裕メロ」


「聞き捨てならないな」



「!?」

顔を上げたメロメロの前に、気を失ったフレアを片手で掴んだ魔王レイが、立っていた。

「こんな程度の魔物で、足止めできると思ったのか」

メロメロの前に、無造作にフレアが投げ捨てられた。