舞子の向こうで、陽炎が揺らぎ、

三人の魔神が現れた。

クラークと舞子…魔神達の周りを風の壁が覆い、砂嵐を防いでいた。

「この魔力は!」

クラークは、ブラックカードを握りしめた。

「舞子!」

舞子は、クラークの表情と、後ろからのプレッシャーを感じ取り、尋常じゃない事態を察し、

振り返らずに、クラークのもとへ走りだした。

「やれやれ…こんな所にあるなんて…。気付かないはずよね」

三人の中央にいた女が、呆れたように言った。

その手には、ブラックカードがあった。ブラックカードを、ヒラヒラと煽りながら、クラークをじっと睨んでいた。

クラークはフッと笑うと、もう平然とした態度に変わった。

「お前の裏切りもまた…予想内のこと。魔王は、お前の考えなどお見通しよ」

女の言葉に、クラークはやっと口を開いた。

「騎士団長が、二人も…ご苦労なことだ」

「騎士団長…」

クラークの隣に立つ舞子は、前方に立つ三人を見た。

中央に立つ…腰まである髪に、切れ長の目に、薄手の赤のワンピースを着た…普通の人間の女に見える…騎士団長リンネ。

その右側に立つ…二メートルはある屈強な肉体に、額から伸びた一本の角に、黒いマントを羽織った…騎士団長ギラ。

そして、リンネの左隣には…短髪に、紫ぽい表膚に覆われ、六本の尻尾をくねらせている…女。

「神流…」

舞子は、騎士団長と並ぶ佐々木神流を睨んだ。

「お久しぶり、舞子!」

神流は、愛想笑いを浮かべながら、舞子に向けて手を振った。

「あらあ…。顔見知りだったわね」

わざとらしくリンネが、笑いながら言った。

クラークは、無表情のままだ。

そんなクラークの様子に気付き、舞子も、心を落ち着かせる。もう神流を睨むこともない。

神流は、舞子を見て、鼻で笑った。

「ほんと…あんたは、人形ね。自分の意思がないの?」

神流は肩をすくめ…そして、頭をかいた。

「あんたらは、面白くないわ!それに、この世界でいちばーん権力があるって、きいてのに…何よ!このショボい力!」