クラークは、にやりと笑った。

(アルテミアは、先日…南アメリカで確認されている…。赤星の行方だけが、わからない)

赤星の消息だけが、つかめていなかった。

(ロストアイライドにいるなら、納得できる)

クラークは頷きながら、司令室の中央にある地球に、手をかざした。

南極近くにある黒い大陸が、映る。

その大陸を見つめながら、クラークの頭に疑問が浮かんだ。

「だとしたら…なぜそこにいる?」

ロストアイライドの結界に覆われた黒い影を見つめ、険しい表情になったクラークを、

心配気に見ていた舞子が、一歩前に出ると、地球との間に割って入った。

凛とした瞳で、ただクラークを見つめた。

「舞子…」

クラークは、何も言わない舞子の…だけど、妙に強い意思を感じ、差し出していた手を下ろした。

そして、舞子に背中を向けると、

「話がある…」

周りに聞こえないような小さな声で呟くと、クラークは司令室から消えた。

テレポートしたのだ。

クラークのいた所を、数秒凝視した後、舞子もまた、テレポートした。

行き先は、分かっていた。



舞子がテレポートした所は、何もない…ただ砂だけが存在する場所。

目印も、思い出も残すことのできない場所。

ただ…ブラックカードを持つ者だけが、これる場所。

かつては、砂嵐の中で、悠然とそびえ立つ塔があったらしい。

今は、その面影はない。

砂嵐の中、風や砂に靡くこともなく、クラークは立っていた。

砂が、激しく当たっているはずなのに…クラークは揺らがず立っていた。 

舞子はすぐに、自分の周囲に結界を張った。でないと、立っていられない。


「中に入ろうか」

うるさい砂嵐の中、クラークの声はなぜか、耳に入ってきた。

塔は、遥か地下へと沈んでいた。

「はい」

舞子は頷いた。

ブラックカードをかざし、二人はもう一度テレポートしょうとした時、

唐突に、砂嵐が止んだ。

「な!」

二人のブラックカードが、警告音を鳴らした。

「バカな」

クラークは、振り返った。