天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}

落ちていくティフィンの目の前に、剣を振り上げる阿修羅像が、近づいてくる。

木像とは思えぬ鋭い切っ先は、金属よりも、鋭利に思えた。

「赤星!」

ティフィンは絶叫した。

瓦礫の上で、活動しているのは、仏像達だけだ。

赤星はどこに。


ティフィンは、何とか羽根を広げ、落下を止めようとするが、止まらない。

確実に、阿修羅像に激突する。

「くそ!ばか星!何やってやがる!」

ティフィンは目をつぶり、再び叫んだ。

「赤星!!」


その叫びに呼応したかのように、瓦礫の山が燃え上がり、一面が火の海に変わった。仏像達も一瞬にして、燃え尽きた。

燃え盛る火の海は、巨大な火の粉を上げたと見えた瞬間…それは、翼と化した。

火の海が、翼を羽ばたかせると、

天へと飛翔した。

中央から、長い首のような火柱が飛び出した。

「フェニックス!?」

老婆は、その圧倒的な迫力に、息を飲んだ。

その姿は、まさに不死鳥だった。

フェニックスは、空中に飛び上がると、すぐにその身に纏う炎を脱ぎ捨てた。

その中から、現れたのは、赤い鎧を纏った赤星だった。




僕は、空中でティフィンを受けとめると、炎の翼を広げた。

そのまま、老婆の目の前まで上昇し、対峙した。

「なぜだ?僕達は、あなたと戦う理由はない!まして、人間であるあなた達と」

「人間?」

老婆はせせら笑った。

「あたし達のこの姿を見て、人間は、あたし達を人間とは認めない!」

「そんなことは…」

「お前達の世界は、どうだい!人しかいないのに、人は少しの違いで、排除し、差別し合うではないか!」

「そ、それは!」

「お前は、危険だ!やっと見つけた!我らの安住の地を、失う訳にはいかないのさ!」

老婆は、両手を突き出した。


空気の壁が、僕の全身を強打した。

「この世界を乱させぬ」

壁が次々に、僕を叩く。

「く!」

僕は、地面に向かって、凄まじいスピードで落ちていった。