天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}

「大丈夫かな?兄貴達、心配メロ」

崖の向こうで、村の奥を見つめながら、メロメロは落ち着かないのか…頭をかいた。

「まあ、兄貴のことだから…本気を出したら、あんな人間どもを、蹴散らすくらい動作もないメロ…だけど…」

メロメロは、大袈裟にため息をついた。

「兄貴…人間にこだわってるものな〜。心配メロ…」

ちらりと隣を見ると、崖の下から吹き抜ける風に、長髪をなびかせたフレアが、無表情で、村の奥を見つめていた。

メロメロは、すぐに視線を外すと、再び村へ視線を戻した。

崖を挟んで、数人の屈強な男子が、こちらを警戒していた。

いざとなったら、魔法を発動できるように、杖をこちらに向けていた。

(フン!フレアの姉貴を見込んで、水系の魔法を使う気メロね。しかし、こいつら程度じゃ…姉貴の炎を、消せないメロ)

メロメロは、戦闘能力は高くないが、相手のレベルや属性を見抜く能力に長けていた。

だからこそ、この世界にいても、人間に狩られることも、魔物に食われることもなく、今まで生きてこれたのだ。

強い魔力を感じる所には、近寄らない。


たった一度だけ、

勘が外れた時…

助けてくれたのが、赤星だった。

相手は、二段階に変化する魔物だった。

まったく、魔力がないと見せ掛けて、相手が近づくと、戦闘タイプへと変わる。

まるで、蛹から蝶に変わるように…。

蜘蛛のような体に、六本の毒針と、股間から像のような長い鼻を、メロメロに向け、その鼻の先から、牙が並んだ口を広げた。


食われると覚悟した時、空から降ってきたのが、赤星だった。

一撃…瞬殺。

そのあまりの強さに、メロメロは惚れたのだ。


赤き炎を纏った勇者に。



「兄貴…」

ぽつんと呟いたメロメロの横で、無表情ながらも、拳をぎゅっと握り締めるフレアがいた。