「赤の勇者よ。この妖精を自由にする前に…村の若い者を、解放してくれんか?お前が、本気になれば、こやつらなんて、簡単に食われるからのう」

老婆の言葉に、絶句した僕の腹が鳴った。

「その代わり…何か食べさしてやろう。そうでないと…お主は危険じゃ」

老婆は、僕に背を向けると、ティフィンを連れて、村の奥へ歩きだした。

(僕が…危険?)

老婆の後ろを、僕は仕方なく、ついて行くことにした。


解放した村人達も、僕に襲いかかることはなく、ただ老婆と僕を見送っていた。

一応後ろからの攻撃に、注意を払う。

「心配はない。この大陸でも、魔物と我々の戦いはある」

老婆は、ティフィンを拘束しながら、僕の方を見ずに話しだした。

「連れの魔物は、崖の向こうで待ってて貰うよ。一匹は、弱いが…1人、魔神クラスがいるしね。村人が怯えてしまう。まあ…」

老婆は、語尾を切り、

「あんたもだけどね」

「!?」

僕には、老婆の言葉の意味がわからなかった。

左右にある家屋は、日本の長屋に近い。

木造の平屋は、木の匂いが漂っていた。

「自分では、わからないみたいだねえ〜。自分の恐ろしさが」

老婆の背中は小さいが、妙なプレッシャーがあった。

「今は、何とか抑えているみたいじゃが…。抑えると、制御するは違う」