飛び出してきた人々の手に、杖や剣を見た時、僕は嫌な予感がした。

「ティフィンは!」

僕は、メロメロに向かって、叫んだ。

「もう、村へ…ヒィ!」

メロメロは、いきなり飛んできた弓矢に、思わず悲鳴を上げた。

「チッ!」

小さく舌打ちすると、ぼくは両手を広げた。

炎の壁ができ、弓矢を焼き尽くす。

(こんな早くに気付き、攻撃できるはずがない!まるで、来ることを知っていたかのように)


どうやら、この村には先読みか…予言者でもいるらしい。

「しかし!」

僕は崖からジャンプすると、一瞬で、次の弓矢をひく村人の後ろに、着地した。

数十メートルはある崖を、軽く飛び越えた僕に、人々が驚き、一瞬だけ動きが止まった。

その隙をついて、僕は両手から、炎の網を作り出し、人々を頭上から覆った。

「動くな!」

ただの網ではない。今は、熱くないが、その気になれば、数千度まで上げることができる。

(まあ…その気はないけど…)

僕は威嚇するように、網に包まれた人々を見回し、

「ティフィン…今、この村に来た妖精はどこいる!」

網に絡められても、剣を握る人々に、僕は心の中で焦った。

(あまり、刺激するな!今の僕は…やばいんだ)

空腹が、血を求める本能を刺激する。

「チッ」

舌打ちした僕の口元に、牙が覗かれた。



「おやおや…あちらの国では、救世主として話題の赤き勇者は……単なる殺戮者かい?」

その声に、はっとして、僕は目の前を睨んだ。

今までいなかったのに、目の前に老婆がいた。

「離せ!ババア!」

しわしわのその手には、縄で縛られたティフィンがいた。

「あなたは?」

身長は140センチくらいしかないが、全身から漂う魔力が、老婆を身長以上に、大きく感じさせた。

(これは…人間の気じゃ…ない)

「その通りじゃよ」

「!」

僕の心を読んだのか…老婆は、にやりと笑った。