天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}

数千の手の先は、ドリルに変わり、

「その美しい体を、まずは穴だけにしてやるわ!」

一斉に、ドリルは、フレアに向ってくる。

フレアの後ろにいるカメレオンの魔物は、思わず目をつぶり、叫んだ。

「兄貴!」

ドリルが迫って来ても、表情を変えないフレアの目の前を、風が通り過ぎた。

その風は、炎を纏っており、ドリルを切り裂きながら、一瞬にして、蒸発させた。
そのまま、風は池一帯を吹き抜けた。

数千の手が消えた。

周囲を飛び回る風を、愕然として、見つめる水の魔神。


「罠にかかったのは、てめえの方メロ!」

カメレオンの魔物は、フレアの背中から、飛び出した。

フレアの羽を、突き刺していた腕も消えた。


「こ、これは!」

水の魔神は、風の軌道を感じ、後ろを振り返った。

フレア達とは、反対側の水辺に、立つ男。

その男の手に、風は掴まれた。それは、巨大な槍。

「やはり…貴様だったか!赤星浩一!」

この世界に来た時よりは、髪が伸び、髭も生えていた。

学生服はボロボロになり、頬に傷痕が残っていた。

チェンジ・ザ・ハートを握り締めた赤星は、静かに水の魔物を見ていた。

「やいやい!降参するなら、今のうちだメロ!うちの兄貴は、てめえなんかとレベルが、違うんだからなメロ!」

赤星の姿を見て、意気がるカメレオンの魔物。

しかし、水の魔神は、見向きもしない。

体を反転させ、赤星と対峙する。

「わらわは、108の魔神の1人、アグア!」

赤星によって消された数千の手が、一瞬にして復活する。

「我らの王、ライ様の命により、貴様を抹殺する」

一斉に、上下、左右、前後ろ…あらゆる方向から、ドリルと化した手が、赤星に向けて、襲いかかってくる。

赤星は、にやりと笑った。

すると、瞳が赤く光った。