「大切なもの…?」

アルテミアには、言葉が意味するものが、わからなかった。

クラークはまた、肩をすくめ、

「やれやれ…。わからない訳があるまいて…。なぜなら、その為に、君は天空の女神であることを、捨てたのだから」

クラークは、ブラックカードを取り出し、アルテミアに示した。

アルテミアはやっと、言葉の意味を理解した。

クラークは微笑み、

「そう…君の母親、ティアナのことだよ」

ブラックカードをしまった。

「しかし…馬鹿な…」

アルテミアは、安易に思い浮べた考えを、首を振って否定した。

クラークは再び、壁にもたれると、腕を組んだ。

「しかし…そうとも言えない。ティアナの体は、魔王の城で、死ぬ前の状態で保存させている」

アルテミアの真剣な顔で、クラークの話を聞く姿に、内心クラークは、にやりと笑っていた。

しかし、表情には出さず、話を続けた。

「人に騙されて、抜かれた心臓…それを戻し、蘇生魔法をかけたら、生き返るはずだ」

アルテミアの体が、震える。

「お母様が…」

クラークは、一瞬…冷たい視線を浴びせたが、口調は変えず、

「しかし…問題はある」

そこで、言葉を切った。

「問題?」

聞き返したアルテミアはもう…クラークの術中に、はまっていた。


「ティアナの心臓は、カードシステムの根幹をなしている…。ティアナの心臓がなくなれば…」

クラークはここで言葉を切り、

「カードシステムは、崩壊する」