僕は、ダラスの目を真っ直ぐに見つめながら、

「友達が、そこにいるからです」

「友達?」

「友達が、捕われているんです」

僕の言葉に、ダラスは思わず、席を立った。

「どうして、格納庫に捕われてるんだ!あそこは、安定者しか入ることが、許されないはずだ!」

「だとしたら…」

僕はダラスから、視線を外すと、呟くように言った。

「何かが、起こってるのかもしれない」


「何か…」

ダラスは嫌なものを、感じた。


かつて、人々が魔法を使えなくなった時期、時の政府は、民衆の為に何もしなかった。

唯一、民衆の為に動いた救世主も今は、いない。



「でも、心配しないで下さい」

僕は、思い詰めたような表情をしているダラスに微笑み、

「僕が、何とかします…いえ、何とかしてみせます」

「な」

あまりの僕の自信に、ダラスは絶句した。

僕はテーブルの下で、拳を握った。

力が溢れてくる。

(今なら、誰とでも戦う勇気がある)

もう一度、拳に力を込め、僕は自分自身に頷いた。


「あまり無責任なことは、言わない方がいい」

ダラスは、僕を見下ろし、

「君が、どれほどの強さを持っていようと、安定者は神に近い力を持ち…魔王は、まさしく神だ。――それに、我々は、君が人間なのか…疑っている」

ダラスの言葉を証明するように、店の外には、何人かの戦士が、こちらを警戒している。

僕に、記憶はないけど…黒竜を倒したらしい。

自分でも、自分の変化に気付いていた。原因はわからないが。

僕は、顔を上げて、ダラスを見た。

(ここで、逃げてはいけない)

僕も立ち上がった。

周りに、緊張が走った。

僕は、ダラスだけを見据え、

「僕は、異世界から来ました」

「異世界?」

ダラスは、たじろくことなく、僕の目を見続ける。

僕は頷くと、言葉を続けた。


「アルテミアと融合してから、いろんな敵と戦いました。まさに、神のような強さを持つ敵とも、戦いました」