「確か…ここだ」

僕は、明菜が消えた廊下に来ていた。ここは、かつて在校生が多いときは、教室として使われていたが…今は、単なる倉庫になっており、体育の授業に使う用具を取りに来るときか、放課後の部活の用で来る以外は、通ることもない廊下だ。

人もいないことだし、僕はファイアクロウを、装着した。

まったく何事もなかったような空間を、凝視する。

右手の爪が、一つ欠けていることを確認し、

「呼び合え!爪のある場所までの道を!切り開け」

右手を突き出した。

僕が念じると、爪の先の空間が、揺れた。

僕はゆっくりと、さらに右手を突き出す。

すると、まるで水面に手を入れたように…空間に波紋ができ、その波紋が広がっていくと、廊下の向こうの景色が揺らぎ、それに合わせるように、暗い空間が見えた。

その中に、大量の武器のような物が、揺らめいた。

「格納庫…?」

そこに、明菜と明菜をさらったやつもいるはずだ。

一気に、ファイアクロウで空間を切り裂こうとした時、

「それが、異世界への道か」

僕は、突然の後ろからの声に、ファイアクロウを空間に差し込んだまま、振り返った。

「演劇部の部長さん!?」

思いがけない人物の登場に、思わずファイアクロウを、空間から抜いてしまった。

「ここから…明菜は、異世界に連れていかれたんだな」

美奈子はつかつかと、赤星に近づいてくる。

「い、異世界って…何のことです」

今なら、しらばっくれられると、嘘をつこうとした。

その時、美奈子は手に持っていたものを、僕に突き出した。


「ポイントカード?」

美奈子が持つもの… それは、正しく異世界の物だった。