「俺は、安定者だぜ?どこにいようと、勝手だろ」

クラークはそう言うと、肩をすくめながら、ジャスティンの前から消えようとした。

「待て」

ジャスティンは、指を一本動かした。それだけで、クラークは壁に押しつけられ、身動きが取れなくなる。

「俺は、ここの責任者だ。勝手なまねはさせない」

「責任者だと!ただお前しか、いじれないだけだろが」

クラークの後ろの壁が裂け、クラークはその中に、吸い込まれた。

「くそ」

ジャスティンは、防御魔法を全身に皮のように張り巡らした。

空間が裂け、手だけが出てきて、ジャスティンの後ろから腰に向けて、気を放つ。

ジャスティンの体が、くの字に曲がる。

空間移動能力。

テレポートと違い、まったく違う次元に移動でき、そこに留まりながら、まったく相手からの攻撃を受けることなく、攻撃することができる。

ジャスティンは、体勢を整えながら、

「なめるなよ」

ブラックカードを取り出した。

「召喚」

ジャスティンの手に現れたのは…ティアナのライトニングソードに似た、十字架そっくりの剣だった。

それを見た瞬間、クラークは四次元から出てきた。

「俺を殺す気か?」

「お前が、何をしてるのか!教える気がないならな」

ジャスティンの殺気に、クラークはフッと寂しげに笑い、

「時が来たら…それまでは、友を信じろ」

クラークはしばし、ジャスティンの目を見つめると、

ゆっくりと背を向けて、歩きだした。


ジャスティンは、クラークの背中を見送りながら、剣を下ろした。

クラークがテレポートし、ここからいなくなったのを確認すると、

ジャスティンは、先ほどクラークがもたれていた――何もない壁を見つめた。

「格納庫にも、微かな魔力を感じたが…」

その魔力も消えていた。

「何が起こってるんだ」

ジャスティンは無意識に、壁の横のティアナの部屋のドアに、目をやっていた。