向けられた銃口と、クラークの視線の冷たさに、明菜は震え上がり、思わず目をつぶった。

「こうちゃん」

思わず、明菜の口から出た名前に、クラークは銃口を下ろした。

「こうちゃん…こう…赤星浩一のことか!」

クラークの手から、銃が消えた。両手を広げ、

「彼は素晴らしい。この世界に来てから、短期間で、目覚ましい成長を遂げた。この世界にいる、どの人よりも、彼は強い」


「こうちゃんが…」

クラークは、話し始めた。

「君たちの世界は、魔物がいないそうだね。伝承の中には、残っているが…。魔法を使えないのも、魔物がいないからだろう。だが、本当にいないと思うかい?」

クラークは、明菜にきいているが、こたえを求めていない。

「いや、魔物はいる。魔物は、人と表裏一体だから。君の世界にもね。ただ魔物は、人と違う生き物としてではなく…普通の人と違う、変わった人として、存在している。君は、人とは思えない…獣ように、同じ人を殺す人を、何人も知っているはずだ」

確かに、明菜の世界では異常ともいえる事件を起こす人々を、ニュースなどで頻繁に報道されていた。

クラークはにやりと笑い、

「君たちの世界では、魔物として覚醒することはないが…もし、世界が違っていたら、魔物になっただろう者。その者が持つ遺伝子を、私は魔獣因子と名付けている」

「魔獣因子…」

「その因子は、我々の世界にいる魔物の遺伝子と酷似している。それを、自由に引き出せるなら…人でありながら、人は人ではなくなる」