何よりも、声が素晴らしかったと…。

その歌声は、大陸一といわれ、多くの人々を魅了した。

パーフェクト・ボイスにパーフェクト・ボディ。

(それが、今じゃ……ジェノサイドのジュリアン)

目に見えるもの、すべてを破壊する悪魔。

皆殺しのジュリアン。

「モード・チェンジ」

アルテミアの体が、変わる。

短髪に、黒のボンテージ姿のストロング・モード。

「あんたは、お母様の知ってるジュリアンではないわ」

アルテミアから仕掛ける。

「だから、殺してあげる」

一瞬にして、間合いを詰めたアルテミアの右ストレートが、レバーを狙う。

まったく動かないジュリアン。

(決まった)

アルテミアが確信した時、見えていた景色が変わった。

見えるジュリアンが一回転し、マンションの屋上のコンリートが、頭上にあった。


「な…」

唖然としてる間はない。

「アルテミア!」

頭から、落ちる前に、体勢を戻さないとならない。

アルテミアは、両手をコンリートにつけ、腕の力でそのまま床を弾き、後転すると、足から着地した。

「何があった!…まさか、投げられたのか?」

アルテミアは、額から流れた汗を拭った。

「あたしが…恐れてる?」

(馬鹿な…)

ゆっくりと、両手をだらんとさせながら、近づいてくるジュリアンに、アルテミアは畏怖のようなものを感じ初めていた。