屋上から、街並みを見下ろすと、もう辺りの火が消えていることに気付いた。

「もう消したんだ」

少し関心している僕に、アルテミアは、

「さっきの火は、街を燃やす為じゃなくって…」

病院を睨みながら、言った。

「あたしを…あぶり出す為だ」

そう言うと、自分の後ろに向けて、回し蹴りを放つ。

蹴りは空を切ったが、アルテミアは蹴った足を軸にして、槍にしたチェンジ・ザ・ハートを、さらに後方に突き出す。

「当たらない!?」

常人では、捕らえられない動きを、見えない相手は、すべて見切っていた。

「アルテミア…」

低く唸るような声は、かすれており、声帯が傷ついていることがわかった。

「やはり…あんたか…」

アルテミアは、槍からトンファータイプに戻す。そして、体勢を反転させた。

「ジュリアン」

アルテミアは、目の前に立つ人物を凝視した。

姉のティアナの透き通るような肌と違い、褐色で焼けた肌。髪は、ブロンドではなく、真っ黒だ。

赤い瞳が、アルテミアを睨み、ティアナと同じタイプの鎧は…真っ赤に染まっていた。

(返り血か…)

ティアナから聞いていたジュリアンのイメージとは、ほど遠かった。

自分とは違うが、スポーツで鍛えられた体は、引き締まっており、無駄な筋肉のない体は、ある意味芸術的だと。そして…