「ちょっと!」

いきなり、目の前から消えたアルテミアに、驚く看護婦の鼻先を、鋭い手刀が通り過ぎた。

「え…」

鼻先から、血が流れたが…気づいた時には、目の前には誰もいなかった。

「な、なんなの…」

看護婦は腰を抜かし、その場に座り込んだ。




アルテミアは、黒いスーツ姿になり、人々の間を、風のようにすり抜けた。

フラッシュ・モード…スピード重視のアルテミアの戦闘スタイルだ。

「やっと、魔力を感知できたけど……チッ」

アルテミアは走りながら、舌打ちした。

「僅かに、あたしより速い」

後ろを見たが、まだ敵は見えない。

普通の人間には、アルテミアの走る姿を、肉眼でとらえることは、不可能なスピード。

「この病院…奥行きが広い!」

結構走ってるのに、まだ廊下の先に着かない。

「アルテミア!外に出よう!みんなを巻き添えにする」

「わかってる!でも…話と違う。まだ誰も殺してない」

魔物はもう、病院内に侵入してるはずだが…誰もやられていない。

「どういうこと?」

アルテミアは苛立ちながら、真っ直ぐ走るのを止め、廊下沿いの開いていた窓から、外に飛び出した。

そのまま、病院の敷地から、隣にそびえ立つ十階建てのマンションの屋上まで、ジャンプした。