何の変化もない日常が、終わった。

僕は…信じられないくらいに疲れた為、家に帰るとすぐに、ベットに横になった。

すると…一瞬で眠ってしまった。





「てめえ!ぶっ殺すぞ!」

バイクに跨って、僕は向こうの世界にいた。

バイクじゃない。

自転車だ。

それも子供用。

いきなり、この世界に来て、自転車に乗ってるものだから、

僕はバランスを崩し、自転車ごと転倒してしまう。

「いててて…」

何とか、身を起こした僕の耳元で、ピアスが怒る。

「いきなり、ばっくれやがって」

「そんなこと言われても…」

痛みをこらえて、

僕は自転車から這い出し、起き上がった。

「さっさと、あたしに変われ」

「ち、ちょっと待てよ…」

自転車を起こそうとした僕を、

後ろから、何かが掴んだ。

「こんな所に…ガキが…」
「飯にありつけるぜ」

それは、巨大な手だった。

全身が、黒い鋼の剛毛で覆われた。

僕は顔を上げ、馬に乗っている人物を見た。

それは、人ではなかった。

「お、狼!!」

絶叫した僕を、

狼男は横目で、ぎろっと睨んだ。

そして、ゆっくりと舌なめずりをした。

「ヒィ」

声にならない叫び声を、上げた僕の耳元で、

アルテミアは、小声で囁いた。

「手間が省けた」