「畜生!…でも…どうしょう…」

いつもの昼休み。

僕は教室で、左手の薬指を見つめながら、イライラしていた。

やっぱり、指輪が気になる。

この世界では、魔物がでるはずがないが、

なぜか…胸騒ぎがした。

窓側の一番前にある僕の席から、何となく外を見た。

曇っている。

昼なのに、薄暗い。

窓の下のグラウンドでは、生徒達がサッカーをしていた。

(胸騒ぎが止まらない。心が騒いでいる)

異世界に行ってから、なぜか、空気に敏感になっていた。

(何もいないはずなのに…)

本能が、危険を告げていた。


「やっぱり…返してもらおう」

胸騒ぎを止める方法は、ただ一つ。

昼食をとる気分にもならないので、席を立った僕は、

ふっと、自分の足元に目がやった。

「え…」

濡れていた。

僕の足元が、濡れていたのだ。

(なぜだ!)

妙な感覚を感じ…辺りを確かめようとした時、

教室のドアが開き、

「こうちゃん!」

明菜が顔を覗かせて、僕を呼んだ。

「ちょっと来て」

「あ、ああ…」

仕方なく、僕はドアに向かって歩き出した。

その時、下をよく観察していたら…

僕は、学校内の異変に気づいただろう。

濡れていたのは、僕の所…だけではなかったのだ。