「アルテミア…」

左手につけた指輪を見つめながら、

僕は…朝の喧騒の中を学校へと歩いていた。

アルテミアが暴走した…あの戦いから、数日たった。

僕が、どんなに話しかけても、指輪に反応はなかった。

話されても、何を話していいのか…わからなかったけど、

朝の挨拶をしても、応えてくれない。

それに…眠りについても、

異世界に行くこともなかった。

「アルテミア…元気出してよ」

僕が、指輪に話しかけていると、

「おはよう」

後ろから、ポンと肩を叩かれた。

振り返ろうとしたが、叩いた人物は、すぐに前に行き、くるっと振り向いた。

沢村明菜だった。

「おはよう」

僕が挨拶を返すと、

明菜は微笑み、

「ありがとう」

頭を下げた。

「え」

驚く僕に、明菜は照れくさそうに、

「あたしが、寝込んでる時、見舞いに来てくれたんだって…」

「ま、まあ…」

「そ、それに…」

明菜は赤を真っ赤にし、顔を伏せると、チラッと下から僕を見、

「なんか…もっと、助けてくれたような気がする」

「え」

明菜は、僕の左手を見つめ、

「ありがとう」

と、また頭を下げた。