「お前にはわからないんだ!」

優は地面の上で、何とか立ち上がろうともがいていた。

「ありふれたヒット曲よりも!未来の人間が、感心する曲を残すことが!真のアーティストなんだ!」

優の叫びに、九鬼は目を細め、

「人を殺した者は、アーティストではなくなる。何かを生み出す者ではなく、奪う者に変わるからだ」


「それでも…平凡な人間の生活は、人間の価値観を変えない!」

「ならば、町を出ろ。さすれば、魔物がいる」

「魔物を殺したところで!何になるか!」

優は何とか手だけを伸ばすと、地面に落ちている乙女ケースを探した。

そして、グリーンの乙女ケースを偶然掴んだ。

にやりと笑うと、

「すぐに、トドメを刺さなかったことを後悔しろ!」

ケースを握り締めた。

「装着!」

グリーンの光が、優を包み…再び乙女ソルジャーに変身させた。

変身ともに、強化される肉体の影響で、優は立ち上がった。

ダメージは完全に抜けていないが、戦える。

「今度こそ…殺してやる!」

優の眼鏡が光った瞬間、


「殺すより〜殺される方が、いい曲ができるかも」

優の耳元で声がした。

「な…」

優は目を見開き、自分の胸元を見た。

背中から、何かが貫通していた。


それは、血塗れの腕。


「高木さん!」

九鬼は絶句した。

いつのまにか、優の後ろに人が立っていると思った時には…

優の体は貫かれていた。

「そ、そんな…」

「まあ〜書けたら、だけど」

腕を体から抜かれると同時に、変身は解けた。

前のめりに、地面に倒れた優の後ろに、血塗れの腕から血を垂らす…女がいた。

その姿は。



「白い…乙女ソルジャー」


乙女ホワイト。

そんな色の乙女ソルジャーを、九鬼は知らない。


乙女ホワイトは九鬼に笑いかけた。だけど、その笑顔とは裏腹に、眼鏡の奥の鋭い眼光が、反射的に襲いかかろうとした九鬼の動きを止めた。

不用意に近づくと、殺されると、九鬼の本能が告げていた。