「交ざわる時空…!」

タキシードの男の体が、震えた。

「今…闇は、存在の意義を持つ」

後ろの九鬼と、乙女ケースを突きだした九鬼が、重なると同時に、

乙女ソルジャーへと変身した。

いや、それは…

乙女ソルジャーとも、

乙女ガーディアンとも…

違うのかもしれない。



夜よりも黒い戦闘服を身に纏った九鬼が、

一歩前に出た。



「何があった!」

カルマは一歩下がると、ライフルを撃った。

直撃したが、九鬼の体にダメージはない。

サングラスのように黒い眼鏡をかけている為、九鬼の目は見えないが、

その表情に、感情がないことを、カルマは感じ取っていた。

「クッ!」

今度は、マシンガンを召喚すると、至近距離から引き金を弾いたが、

弾丸は弾かれることなく、黒の戦闘服の中に消えた。

「な!」

まるで、戦闘服の表面が、生きているように見えたカルマは、さらに後方にテレポートすると、

両手を突きだした。

「は!」

サイコキネッシスの濃度を上げ、光線のようになった念動力が、

九鬼の体に光の速さで、激突した。



しかし、

念動力はまた、戦闘服の中に消えた。



「え?」

愕然とするカルマを見て、タキシードの男は鼻で笑った。


「馬鹿目。あの戦闘服は、ブラックホールと同じ。あらゆる攻撃を飲み込む!あの程度の光で、ブラックホールを破壊できるか」





「馬鹿な!」

カルマは再び、テレポートすると、九鬼の真後ろに出現し、巨大なハンマーを振り上げた。

九鬼の脳天に向かって、振り落とされたハンマーは、

九鬼の人差し指で破壊された。

「フン!」

回し蹴りが、カルマの腹にヒットした。


「うぐう!」

吹っ飛んだカルマの全身を包む戦闘服が、空中でひび割れ、

粉々になった。


「そ、そんな…」

頭から、床に激突したカルマは、そのまま…倒れ込んだ。

その衝撃で、床の上に、

ピンクの乙女ケースが転がった。