タキシードの男と漸次の間に、

1人の女が立っていた。

真っ黒な姿は、闇より黒い。

「ば、馬鹿な!」

漸次の振り下ろした剣は、その女の人差し指一本で止められていた。

女は、人差し指を弾いた。

すると、剣は弾かれ、漸次の両腕も上がった。

上段の構えのようになった漸次の胸が、露になる。

そこに、女は回し蹴りを喰らわした。

「うぎゃ!」

ふっ飛んだ漸次は、礼拝堂の床を転がった。


しかし、歴戦の勇者であった漸次は、すぐさま立ち上がった。

「ど、どうしてじゃあ!なぜ」

漸次は翼を広げ、体勢を整える為、その場から離脱しょうとした。

しかし、

女はそれを許さなかった。

突然、後ろに現れた女は、漸次の翼を手刀で切り裂いた。

「ぎゃああ!」

悲鳴を上げる漸次を見て、

タキシードの男は笑いを堪えていた。

「どうして、どうして!」

両方の翼を切り裂くと、女は漸次の足を払った。

尻餅をつく漸次。


「どうして!」


女の右足が、輝き出した。

「どうして!」


そして、女は漸次に向かって飛んだ。

「乙女ブラックがここにいる!!」



「月影キック」

漸次を蹴り飛ばし、床に着地した乙女ブラックは、呟くように言った。


「どうしてえええ!」

漸次の全身にヒビが入り、

そして、破裂した。


「す、素晴らしい!」

タキシードの男は、興奮気味に拍手をした。


乙女ブラックは、タキシードの男の方を向くと、

無表情のまま…眼鏡を外した。

すると、変身が解け、

1人の少女に戻った。


「お疲れ様でした」

タキシードの男は片膝をつき、少女に向かって頭を下げた。

「九鬼様」



そこに立つのは、九鬼真弓であった。