「わたしを置いて、旅立ったあんたは…向かったはずだ!魔王のもとに!」

カレンの叫びに、

ジャスティンはフッ笑うと、目線を下に向けた。

「ジャスティン!」

カレンは、ジャスティンに向かって走りだそうとした瞬間、

「正確には、違う」

ジャスティンは話し始めた。


カレンの足が止まった。


「私は、アステカ王国のジェーンとアルテミアに会いに行っただけだ。結果的に…魔王と赤星君の戦いを見届けてしまっただけだ」

ジャスティンの脳裏に、炎の鎖となって…ライを封印する赤星浩一の姿がよみがえる。


「何があったんです!世間では、魔王と赤星浩一が、相討ちになったと言われてるけど…」

「それは違う。魔王が倒されたならば…彼が、創造した騎士団長達も、消えるはずだからな。やつらは、他の魔神とは違い…魔王の手足そのものと同じ存在だからな」


「だったら!魔王は!赤星浩一は、負けたのですか?」

カレンの言葉に、ジャスティンは真剣な表情を向けた。

「勝ち負けではないよ。赤星君は、魔王を封印した。未来の戦士に、世界を託してね」

「未来の戦士?」

「そうだ」

ジャスティンは頷いた。

「まだ見ぬ…未来の戦士に…。この世界で生まれた戦士に」

ジャスティンのどこか…切なげな言い方に、

カレンは気づかなかった。

それよりも、気になることがあったからだ。



「アルテミアは、どうなりました!」

カレンとアルテミアは、従姉になる。

カレンの目的の一つに、アルテミアを斬ることがあった。

カレンが持つ剣…ピュア・ハートは、斬った…


いや、

食った相手の能力を手に入れることができるのだ。

その為には、剣を突き刺し…中から食わさなければならないが。


カレンの必死な物言いに、ジャスティンは目を細め、静かに答えた。


「アルテミアは…行方不明だ」

「え!?」

カレンの動きが止まった。


ジャスティンは、カレンから目を離すと、

「アルテミアは…崩壊したアステカ王国からは、脱出できたよ。それは、間違いない。しかし…そこから、彼女の足取りはわからない」