時間が経つのは早い。


午後の授業も、後一つを残すだけになった。

狭間の休み時間。


カレンは、つい一時間前に戦った屋上に呼び出されていた。


「まったく…学校で暴れるのは、やめてもらいたいな」

屋上の破損部分に、黒いカードを当てて補修している男がいた。

カレンは、下がり始めた太陽よりも、その男の背中に目を細めた。

「それに…月影が本来の力を発揮するのは、月の下だ。あの程度とは、思わないことだ」

男は黒いカードを、黒のスーツの内ポケットにしまった。


カレンは足を止め、両手を組むと、男の背中を睨んだ。


「久々に会ったのに…説教ですか」

カレンは腕を組みながら、歩き出した。

「それよりも…先に謝るべきではないんですか?」


「謝ってなかったかな?」

男は、振り向いた。

カレンは呆れながら、

「それに、突然連絡が来たと思ったら、月影に接触しろだなんて」

「仕方ないだろ?月影は、男ではなれないんでね」

女のような美形でありながら、漂う雰囲気の精悍さ。

ヒョロとした印象なのに、その隠された肉体は、鍛えられた日本刀のように無駄がない。

人類最強の男…と誰もが認める戦士。

もとホワイトナイツの1人にして、安定者だった男。

ジャスティン・ゲイが、大月学園の屋上にいた。


「わたしを気絶させて、いなくなったと思ったら〜。一年ほったらかしにして」

カレンの怒気がこもった声に、

ジャスティンは苦笑した。

「君の強さは、完成されている。後は、経験値だけだ」

ジャスティンの言葉に、

「だけど!こんなレベルでは、魔王や騎士団長には勝てない!」

カレンは叫んだ。

ジャスティンは、カレンを見つめた。

何とも言えない目で、カレンを見るジャスティンに、

「あんたは…知ってるんでしょ?魔王と…赤星浩一。そして…アルテミアが、どうなったのか!その真実を!」

問いただした。