「そ、それは!」

リオは目を見開き、女子生徒の指にぶら下がっている眼鏡を確認した。

「ま、まさか!?」

はっとして、リオが真後ろを振り返ると、気を失っている梨絵が目に入った。


「生身の素人に…やられるなんて、情けない!」

無様に床の上で寝ている梨絵の不甲斐なさに、リオの全身が震え出した。

「おのれええ!」

女子生徒の方を向き直すと、リオは叫んだ。

「よくも、妹を」

殺気を漂わせながら、女子生徒に近付いてくるリオの迫力に、

逃げることなく、女子生徒は嬉しそうに笑った。


「最初から、あんたが相手の方がよかった」

リオに向かっていこうとする女子生徒に、

後ろから九鬼が叫んだ。

「いけない!」

慌てて、2人の間に入ろうとする九鬼を、

女子生徒は手で制した。

「心配するな。こんな程度の相手」


「小娘があ!」

リオの拳が、女子生徒に迫る。



「乙女ガーディアン…」

女子生徒は胸元のペンダントに、指先を触れた。

「どれ程のものか」

女子生徒は口元を緩めながら、リオを睨んだ。

「見せてみろ」


リオの拳が決まる瞬間、女子生徒の姿が消えた。


「な!」

テレポートではなく、神速を超えたのだ。


リオの横をすり抜けた女子生徒の手には、

針のように細い剣が握られていた。




「あり得ない…」

リオは絶句した。

あらゆる攻撃を跳ね返す乙女ダイヤモンドのボティの…

肩から腰にかけて、傷が走っていた。


「乙女ダイヤモンドの無敵のボティに…」

斬られたダメージよりも、斬られたことによる精神的ショックにより、

リオは床に、片膝をついた。

「無敵なものなどない。あんたは、乙女ガーディアンの力に頼り過ぎた」

女子生徒は振り向き、剣先をリオの背中に向けた。



その時、昼休みが終わるチャイムが鳴り響いた。

「フッ…」

女子生徒の手から剣が消えると、

リオに背を向けると、出入口に向かって、ゆっくりと歩き出した。