「お姉様!」

梨絵が絶叫した。



九鬼はブレイクダンスのように、床の上で回転すると、

上半身を起き上がらせ、回転する体をさらに捻った。

そして、コンクリートの床に頭が突き刺さったリオの首筋向けて、回転し…しなった鞭のような蹴りを放った。


「うぎゃあ!」

さすがに堪らず、リオが奇声を発した。



「手の内をさらしているのは…お互い様だ」

九鬼は、完全に立ち上がった。

「ダイヤモンドと言えども…無敵ではない。結合部や、関節が動くところは、比較的に弱い」


「貴様!」

突き刺さっていた頭を、力ずくで抜くと、リオはすぐに立ち上がった。

「投げ技とはな…」

九鬼を睨むリオの目よりも、大したダメージを受けていない体に、心の奥で舌打ちした。

(これが、乙女ガーディアンの力か)


屋上の真ん中で、睨み合う2人の緊張感が、周りの空気を振るわせていた。



「よくもお姉様の美しき体に!」

その緊張感を切り裂くように、梨絵が近づいてきた。

「罰を受けろ!」

梨絵は乙女ケースを突きだすと、

「装着!」

赤い光が乙女ケースから放たれ、

梨絵は乙女レッドに変わった。


「死ねええ」

突進してくる梨絵と、

再び拳を握ったリオの動きに、

九鬼は仕掛けるタイミングを図りかねていた。

「クッ!」

ぎりぎりで、攻撃を避けるしかないが、

2人の動きの速さがあまりにも違った。

やはり、

リオだけは絶対避けた方がいい。梨絵は、それからだ。

九鬼が…そう判断するまで、瞬き程の時間しか使っていない。



その為の防御の構えを取ったと同時に、

出入口の上から、1人の女子生徒が、飛び込んできた。

九鬼と背中合わせに着地した女子生徒は、梨絵のパンチを腕を絡めて払うと、膝蹴りを食らわした。

九鬼は、リオの拳をギリギリ避けると、チョップを叩き込んだ。

しかし、リオはダメージを受けていない。


「何て…固さだ」


膝を叩き込んだ女子生徒は、少し顔をしかめ、足をさすった。