灰と化したデーテの体が、風に乗って飛んでいく。

九鬼は、飛ばされていく灰を見つめ、

「…記憶があるから、人ではない。自らの意志で、未来を選べる…。それが、人だ」

九鬼は目を瞑ると、デーテに未来を奪われた人々の為に、黙祷した。



「お姉ちゃん…」

九鬼の後ろから、声がした。

はっと目を開けると、九鬼は振り向いた。

そこには、廊下で会った少女が微笑んでいた。

そして、すぐに消えた。




「す、すまない…」

九鬼の瞳から、涙が流れた。

「もっと早く…来ていれば…」



九鬼は月の下で、泣き崩れた。

魔を倒した。

しかし、それに意味があったのか?

少女を助けられなかった。

それでも、次の犠牲者を防いだではないか…。


そんな風に、九鬼は思えなかった。



月の力を得て、闇と戦える力を得た時から…


闇からすべての人を救う。

それが、自分の使命だから。

月がすべてを照らすように、

自分はすべてを救いたい。


だから…。

それが、できなかった自分を悔いた。

例え…少女が微笑んでくれたとしても…。