「人間の男は、食う気がしなかったが…女は別だ!それに、子供はまだ男でも、柔らかいからなあ」

ポールの頭上で舌舐めずりする魔物達。

「女も、固くなる前に…食わないと!」


そんな魔物達のことより、母親を殺された悲しさがポールを動けなくしていた。

母親の遺体にすがり付くポールに、魔物達が上空から襲い掛かる。

「お母さん!」

ポールは目をつぶった。

母の死のショックで、動けなくなっていたのだ。




「ぐぎゃあ!」

悲鳴はポールではなく、魔物達から発せられた。


「おい!そこの人間のガキ!」

「え?」

ポールは、そばに誰か立った気配に気付き、目を開くと顔を上げた。

前に立つ細身で、背が高い女。

長いブロンドの髪が、魔物達の翼がおこす風に靡いていた。

さらに、ポールが顔を上げると、上空で回転する物体が、魔物達を蹴散らしていた。

「お前が握り締めているのは…例のカードか?」

「え!」

ポールは突然の質問に、答えられない。

「知らないのか?人間が魔力を使う為に、必要なカードかときいている」

ブロンドの女は振り返り、ポールを見た。

ポールはあまりの美しさに、息を飲んだ。

ブロンドの美女は、そんなポールを目を細めて見ると、

「魔物の数が多い!このままでは、あたしもお前も殺される…。だから、あたしにそのカードを…」

渡せという前に、ポールはブロンドの美女にカードを差し出した。

「天使様だ」

感嘆の声を上げるポールを、ブロンドの美女は訝しげに見つめた。

「本で見たことがあるもん!天使様だ…天使様が助けに来たんだ!」



「天使って…どんな姿だ?」

あまりのポールの羨望の眼差しに、ブロンドの美女は鼻をかいた。

「とっても綺麗で…白い翼が生えてるの!」


「そうか」

ブロンドの美女は、カードを受け取ると、軽く笑みを浮かべ、叫んだ。

「モード・チェンジ!」

その瞬間、ブロンドの美女は姿が変わり…まるで、本当に天使のような姿になった。