窓の外で雷鳴が轟く中、

黒い影と化したお父様に、抱かれて…お母様はぐったりと、首をくの字に曲げ、眠っているように見えた。

純白の服の胸元に、血の跡なければ…。

お母様のブロンドの長い髪が、床についていた。

石造の王の間の中央に、

お父様は、無言で立っていた。

雷に照らされても、床に影を落とすこともなく、

抱かれているお母様の影だけが、床に伸びていた。

「何があったの?お母様!」

思わず、走り寄ろうとするあたしを、お父様は眼力だけで跳ね返した。

石造の床を、転がるあたしは、すぐに体勢を整えると、お父様を見上げた。

「!!」

その何とも言えない殺気に、あたしは理解した。


「お母様に、何をした!」

あたしの瞳から、涙が流れていたが、拭うことはしない。きりっとお父様を睨んだ。

「お母様に、何を!」

お父様は、こたえない。

あたしは堪え切れずに、絶叫した。

「どうして…お母様を!!」


「あらあ。いいじゃない」

右の柱の影から、マリーが、姿を現した。

「そうよ。名誉なことよ」

左からは、ネーナが…。

「一生…お父様に、尽くすことが、できるんだから」

「家畜としたら、大したものよ」

「まあ」

マリーは、泣いているあたしに、顔を近づけ、

「一生…飲み物としてだけど…」

クスッと笑った。

「生きた樽ってとこ」

ネーナも笑った。


しばらくの沈黙に震えてから…

「うわああああ!」

あたしらさらなる絶叫とともに、

お父様に襲いかかった。

「な!」

あまりの迫力に、マリー達は怯んだ。

あたしは、お父様に生まれて初めての殺意を覚え、生まれて初めて、攻撃した。

その瞬間、

凄まじい電流が、

あたしの体を包み、

そのまま…

意識を失った。

天空の女神であるあたしを、電流で痺れさせたのだ。

「お母様…」

崩れ落ち、意識を失う寸前まで、あたしは何とかお母様に手を伸ばそうとした。

だけど、届かなかった。