そんなお母様のようになりたかった…。


だけど…あたしは、バンパイアにして、魔王の娘。

魔王の娘が、人間になどになれるはずがない。

父でもある魔王ライと、あたしが直接話すことは、殆んどなかった。

あたしの側近である騎士団長達が、お父様の御言葉をあたしに、伝えていた。

その役目は、騎士団長のリーダーであるバイラ。

御姉様方と違い、あたしにだけ…側近は三人いた。

バイラ、ギラ…サラ。

その中で、特にバイラは口うるさくて、あたしに王とは何かといつも言い聞かせていた。

お母様が所属する防衛軍と魔王軍との関係は、緊張状態になっていた。

お母様が、2つのまったく違う組織内で、何とか平穏な状況をつくろうとしていたけど…。


「人と我らは違うもの…。相容れるわけがございません。それに…人は狡猾です」

バイラの言葉も、あたしは右から左に聞き流していた。

(あたしは、お母様の子)

だから、できれば…お母様がいるところにいたかった。

だけど、魔王の娘が人間の側につくなんて…あたしは想像もできなかった。



だけど、

そんな風に思ってた日々を変える…運命の日がやってきた。

それは、雷鳴とともに。


お父様の名を持つ雷が、城を闇の中に、浮かべ上がらせていた夜。


あたしは、信じられないものを見た。


お母様が、防衛軍の本部から帰ってきたという報告を聞いたあたしは、

お母様を探して、城を歩き回っていた。

部屋にいなかったからだ。 

あたしが足を踏み入ることができるすべての場所をチェックした後、

あたしは恐る恐る王の間を覗いた。

そこで見たものは、

血塗れになったお母様を抱く…お父様の姿だった。


「お母様!」

あたしは、王の間に飛び込んだ。

玉座の後ろは、巨大なガラス張りの窓になっており、轟く雷鳴の光が、お父様の表情を隠していた。