「!?」

十字架のペンダントを握り締めていたカレンは、突然の殺気にベッドから起き上がった。

まるで、耳から耳へ、脳を突き破ったような殺気が、辺りを震わしていた。


「な、なんだ…」

その気を感じた瞬間、カレンは窓から飛び出し、隣の家のベランダに足をかけると、大きく空にジャンプした。

その瞬間、前方にある町に巨大な火柱が立ち上ぼり、周囲の家屋を消滅させた。

火柱の太さは、数キロはあり、

やがて…巨大な竜へと姿を変えた。

「きええええ!」

竜は咆哮を上げると、開けた口から無数の竜を吐き出した。


「サラマンダー!?」

カレンはペンダントの中心にある赤い宝石に、手を触れた。

すると、中からピュアハートが召喚され、カレンは握り締めた。

家屋の屋根を飛びながら、カレンはサラマンダーに近づいていく。

しかし、火柱に近付くにつれ、カレンの足は絡まり、ついには屋根から落ちた。


着地できたが、足が震えていた。

「こ、こんな…プレッシャー」

感じたことがなかった。

隣町は、数秒で燃え尽き、ただのすす焼けた野原に変わった。

サラマンダーは、360度に展開し、次の町へと牙を立てた。

カレンの方にも、サラマンダーが向かってきた。

炎の口を開け、カレンに近づいてくるサラマンダーを一刀両断しょうとしたが、

カレンは斬れなかった。

いや、体が動かなかったのだ。

カレンは、サラマンダーの向こう…火柱の中から、ゆっくりと歩いてくる人物に、目を見張った。

その人物は、メイドのコスプレをした女だった。

猫耳をつけ、両手に鉤爪を装備した女。

にこにこしながら、近づいて来る敵を見て、カレンは生まれて初めての恐怖を感じた。

その恐怖は、カレンの心と動きを奪った。

普通ならば、すぐに死んでいただろう。

しかし、カレンとは逆に、その手に握られたピュアハートは興奮し、刃を震わせた。

カレンは、右腕だけが激しく揺れていることに気付いた。その動きは、あまりにも激しく、カレンの思考を再び動かすことになった。