「ただいま」

挨拶を呟くようにいうと、カレンは家のドアを開けた。

アートウッド家にいた時は小さいながらも、屋敷に住んでいたが、

養子にだされた家は、小さな一軒家だった。

狭く感じた家も住み慣れれば、大した違和感もない。

「おかえりなさい。少し遅かったわね」

母親となった女が、二階に上がるカレンの足音に気付き、顔を出した。

もう何年もたつとはいえ、他人である。まだ親子の間は、ぎこちなかった。

一応、父さん母さんと呼んではいるが、

それはそう呼んだ時の養父母の嬉しそうな顔が、忘れられないからだ。

育ててもらっているのだから、それくらいは当然。

どこか冷めた子供だったのだろう。それは、今も変わらない。



「ふう」

少し息を吐いた。ここは、少なくとも、少しは息抜きができる場所だった。

それなのに、先程現れたサイキッカーが、カレンには気になった。

(アステカ王国…。伝説の国といわれているが、確かに存在する)

学校の図書館に資料がなかったので、カレンは中央図書館までテレポートした。


一部の関係者しか入れない奥の蔵書まで、忍び込んだ。

カレンのレベルを止めることのできるセキュリティは、存在しない。

コンピューターを狂わせながら、正常にし、監視カメラには夢を見させた。


そこで見た資料によると、サイキッカーとは…精神力を力に変えることのできる人類とあった。

魔力を使わずに、力を発揮できる能力はまさに、理想的であるが、

その分、脳への負担が激しく、精神の発達に伴い、肉体は、一般の人間よりも劣り、身体能力は下がっている。

脳を酷使している為に、直感力や予知に長けているが…老化は早い。

寿命は、普通の人間の半分と言われている。

その為、一部の王族の中には、精神をダウンロードして生きている者もいるらしい。

「サイキッカーか…」

まだ剣を合わせた訳ではないので、実力はわからなかった。

カレンはベッドに横になった。

ベッドと机以外何もないシンプルな部屋。

(これさえあればいい)

カレンは、胸の十字架を握り締めた。