「これは…私の戒めです。力に溺れるな。そして、人として、何を為すべきかを教えてくれます」

ジェシカの言葉に、僕はじっとブラックカードを見つめた。

(もし…みんなが、平等にポイントを使えたなら……カードシステムは、存在していてもよかったのではないのか?)


しかし、実際は貧富の差がはっきりとでてしまった。

まるで、貨幣のように。

(だけど…)



僕はジェシカに、カードシステムがなくなってから…そして、僕とアルテミアが、いなかった時期のブールワールドの話をきいた。


ジェシカは、笑顔でこたえ、

「最初は、カードシステムがなくなった戸惑いは、ありましたが……今は、落ち着いています。人の生きるという力は、凄いんですよ。あなたが、私に言ったように…」




ジェシカ達は、世界中を旅して、魔物と戦いながら、自警団を作っていた。

いずれは、百人程度の組織をつくり、人間を守りたいと……。大きすぎる組織は、腐敗してくるから、小さな組織をつくりたいと。


そして、最後に彼女は、赤星にこう言った。


「私達は…あなた方がいるから、頑張れるのです。あなた方が、希望なのです」

ジェシカは真っ直ぐに、赤星を見つめ、

「いつか…魔王を倒してくれると…」



そう告げて去っていくジェシカを見送る僕に、

ピアスの中から、アルテミアが言った。

「赤星…。お前に話がある」


「え?」


「お前は……今のままでは、駄目だ」

いきなり、声が後ろから聞こえた。

驚き、振り返った僕の前に、トンファ-を構えたアルテミアが立っていた。

「な」

絶句する僕に、アルテミアは呟くように言った。

「モード・チェンジ…」

口調は穏やかでありながら、黒のボンテージ姿になったアルテミアは素早い動きで、一瞬で僕の目の前に立つと、

右足を大きく振り上げた。