「あたしも…最初は…お母様の死の真実を知った時…人なんか、皆殺しにしてやろうと思ったわ」


「そ、そうだ…それが、正しい…」

ライトニングソードが胸から、背中まで貫通しながらも、バイラは口を開いた。

「人に…この世界で生きる価値は、ない」


「違う!」

アルテミアは、バイラの考えを否定した。

「お前は、人を…人という言葉で、一区切りにしたがる!人には、1人1人…固有の名前があり…愚かで弱いやつもいるが…あたしなんかより…強いやつもいる」

アルテミアは、ライトニングソードをさらに押し込んだ。

「お前は…人を知らない…」

「ククク…」

バイラは笑い、ライトニングソードの刀身に触れた。そして、アルテミアを見つめ、

「あなたの力…モード・チェンジ。それは、ティアナが開発し、人の身では扱えずに、彼女の体を蝕んだ技…。それを使えるのは、あなたが魔王の血を受け継いでいるからだ…」

バイラは自ら、ライトニングソードを引き抜いていく。刀身をつかんでいる手からは、血が流れていた。

「その事実を…忘れ無きように」

「ああ…わかっている」

アルテミアは、頷いた。

バイラは頭を下げると、ゆっくりと顔を上げ、アルテミアに微笑んだ。

そのまま…地上へと落ちていく。



「それでも……我は…人を許さない」


バイラは血を流しながら、落ちていく。

アルテミアは無言になり、ただ落ちていくバイラを目で追った。

「アルテミア…」

僕もアルテミアのことを…少し心配した。

嫌なことを、思い出しているのではないかと…。




バイラは、地上に激突し、鈍い音と砂埃が上がったけど、

砂埃が止んだ後、バイラの姿はなかった。

地面が窪んでいるので…確かに落ちたようだが、

体はなかった。




アルテミアはしばし、その窪んだ後を、上空から見下ろしていた。