「え?」

アルテミアの行動がわからない僕の耳に、アルテミアの歯軋りが聞こえた。

踏張っているが、蹴りは途中で止められていた。


「魔王……以外で、今のあたしが倒せないやつがいたなんて」

アルテミアの言葉を聞いて、光の爆発がなくなった空に、笑い声がこだました。

「ハハハ…。根拠なき自信は、命をすぐになくしますよ」


アルテミアの蹴りを、バイは手首の捻りだけで押さえていた。

「しかし…」

バイラは自嘲気味に、口元を緩め、

「それは…私も同じ」

アルテミアの蹴りを、手首の動きだけで弾くと、少し距離を取った。

すると、また後方から光線が飛んできたが、振り向いたバイラの目が光ると、

光線が途中で消え、数百メートル離れたレイの居城の後ろが、爆発した。


「てめえ!」

アルテミアは、チェンジ・ザ・ハートをトンファーに変えて、殴りかかった。

鼻先で、トンファーをよけたバイラは、アルテミアのお腹に膝を入れると、また離れた。

「そう何度も!」

アルテミアは、ダメージを受けていない。膝が入る瞬間、少し体を後ろに反らしていたのだ。

「食らうか!」

再び挑んでくるアルテミアではなく、バイラはチェンジ・ザ・ハートを見つめ、呟くように言った。

「やはり……娘の味方をするか…」

そう言った後、フッと笑うと、バイラは右手を突き出した。

「バイラブレイク!」

技を放ちながら、バイラはアルテミアに話しかけた。

「確かに、前よりは強くなられた!しかし!その力を与えた…あなたの母上は、人に殺されたのだ!その人の力を借りるか!」

「違う!お母様は、人を守る為に最後まで生き…あたしに、力を残してくれたんだ!」

アルテミアは、ライトニングソードに変え、バイラの雷撃を切り裂いた。

「人の弱さ…卑しさが、お母様を殺したけど……人の優しさと厳しさが、あたしを強くした」

アルテミアは、ライトニングソードを突きの形に持っていく。

「だが!殺したのだよ!ティアナを!」

バイラが絶叫した。

「お母様は、殺されたとは思っていない!」

アルテミアの突きが、バイラの胸を突き刺した。