「天空の女神が!」

リョウは、目を見開いた。

「そうだよ」

ロバートは優しく、頷いた。

天空の女神が使った…。それをきいただけで、リョウには、特別なものに思えてきた。


嬉しそうに、目を輝かせるリョウの様子に、ロバートとサーシャはただ見守るだけだった。




次の日の朝早く、家から旅立つリョウを、ロバートとサーシャは手を振って、見送った。


「いってきま〜す!」

ドラゴンキラーの入ったケースを持って、手を振り返すリョウ。

その横には、フレアがいた。

「いこう!」

リョウはフレアに声をかけると、前を向いて歩きだした。

もう振り返ることはない。


フレアは、ロバートとサーシャを見つめ、頷き合った。

フレアの瞳に、固い決意の意思がこもっていた。


フレアもまた前を向くと、振り返ることをしなかった。




「もう……会うことはないのですね」

リョウの背中を見送りながら、サーシャが呟いた。

「仕方があるまい。この時空は、終わるだからな…」

ロバートもまた…リョウの背中を感慨深く見つめていた。

リョウの成長のすべてが、思い出せる。


「子供を持てたのだ。それも、お前と」

ロバートは、サーシャを見た。

サーシャは、こくっと頷いた。

「それだけでも…満足だ…」

リョウの姿が小さくなっていく。

ロバートは、ただ見つめ続けた。

サーシャはロバートに近づき、肩にもたれた。

ロバートは、サーシャの肩を抱き、

「死ぬ準備はできている。あとは…」

ロバートは、サーシャに顔を向け、

「どう…死を見せるかだ。人のいう種の悲しき死……絶滅の瞬間を…」