「クククククク…」

玉座の上で、1人含み笑いをもらす魔王レイの前で、跪いている二人の魔神。

カイオウとポセイドン。

そして、玉座の横に立つ…死の女神デティーテェ。

デティーテェは、レイの顔を覗き込んだ。

「何がおかしいの?お父様」

デティーテェの質問にも、レイは答えない。

王の間に、レイの笑いだけがしばしこだました。



「王よ」

王の間に、炎の魔神が入ってきた。玉座の前で、跪き、

「空牙様が、お帰りになりました」

魔神の報告に笑いながら、レイは言った。

「ククク…通せ」



凛とした表情で、王の間に入ってきた空牙は、学生服のままだ。

「どうした?手ぶらか?」

空牙は、梓を捕らえるように命じられていたが…レイの狙いは違った。

レイの質問にも答えず、空牙カイオウとポセイドンのそばまで、歩いてくる。

レイの目の前で足を止め、ただレイの顔を見る。

レイは鼻を鳴らし、

「フン。何か言いたそうだな?」

「……」

空牙は答えない。

「お父様が聞いてるのよ!答えないか!この無礼者が!」

デティーテェは叫んだ。

しかし、空牙はデティーテェを完全無視した。

「空牙!」

その態度にキレたデティーテェが、空牙のそばに行こうとするのを、

レイが右手を伸ばして、止めた。

「空牙よ…」

レイは笑みをやめ、じっと空牙を見つめると、

「会ったのだろ?あやつと…」

そこまで言って、抑えきれなくなった。

レイは、声を出して、笑いだした。


「ハハハハ!どうだった!あやつは、また違う時空間に旅立ったか?悔しかろうて!何もできなかった自分の腑甲斐なさに!」

空牙はただ…レイを見つめる。

「あやつは、人間の分際で、我に逆らいよった!生まれたばかりのお前を、助ける為にな!」

レイは止まらない。

「我に逆らった罰よ!死ねぬ体で、永遠に苦しむがいい!!ハハハハ!」

「母は…死んだ…」

レイの笑いの中、空牙は呟くように言った。